後立山(長野) 布引山(2683m)、鹿島槍ヶ岳北峰(2842m)、鹿島槍ヶ岳南峰(2889.2m) 2024年8月24日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:30 大谷原−−1:24 西俣出会 1:27−−2:52 高千穂平(標識)−−3:46 冷乗越(県境稜線)−−3:55 冷池山荘−−4:02 テント場−−4:46 布引山−−5:27 鹿島槍ヶ岳南峰−−5:53 鹿島槍ヶ岳北峰 6:12−−6:38 鹿島槍ヶ岳南峰 7:00−−7:27 布引山−−7:55 テント場−−7:59 冷池山荘−−8:09 冷乗越−−8:37 高千穂平(標識)−−9:18 西俣出合 9:24−−10:05 大谷原

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2024年8月24日 日帰り
天候快晴後霧
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場大谷原に駐車場あり。今年も橋を渡った対岸の駐車場も利用可能だがそれを知らない登山者が多い
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望いずれの山頂も晴れれば大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント大気の状態が不安定で連日の雷雨で続く中、猛暑とガス覚悟で鹿島槍ヶ岳へ。日の出直後に山頂に到着した時には雲海の高さは高かったが周囲の山を含めてガスはかかっておらず大展望。北峰到着時には富山側からガスがかかり始め、ブロッケン現象が見られた。下山時には稜線にもガスがかかり始めたが、赤岩尾根を下っている時は日差しが強くて大汗をかかされた。下山時の大谷原の気温は+28℃もあって暑すぎたが、花は完全に秋に移り変わっていた。


鹿島槍ヶ岳北峰でのブロッケン現象。午前6時の早朝からガスが上がり始めていた


見かけた花と開花状況

花の種類

場所 

開花状況 

ゲンノショウコ 林道 花盛り
キツネノボタン 林道 終わりに近い
ツリフネソウ 林道 花盛り
キツリフネ 林道 花盛り
ミヤマアカバナ? 林道 見たのは2株のみ
テンニンソウ 林道〜西俣出合 花盛り
キバナノヤマオダマキ 林道終点付近 花盛り
ネジバナ 林道終点付近 花盛り
コゴメグサ 林道終点付近、稜線 花盛り。稜線はミヤマコゴメグサと思われるが林道終点はミヤマコゴメグサか不明
ソバナ 林道〜西俣出合 終わりに近い
キオン 西俣出合 終わりに近い
ガクアジサイ 西俣出合 ほぼ終わり
ヒヨドリソウ 林道〜赤岩尾根 ほぼ終わり
ヨツバヒヨドリ 林道〜赤岩尾根 ほぼ終わり
ハクサンオミナエシ 赤岩尾根 ほぼ終わり
オオコメツツジ 赤岩尾根下部 ほぼ終わり
ノリウツギ 赤岩尾根 ほぼ終わり
リョウブ 赤岩尾根 ピークを過ぎている
ホツツジ 赤岩尾根 ほぼ終わり
オオカニコウモリ 林道、赤岩尾根 花盛り〜終わり
ミヤマホツツジ 赤岩尾根〜稜線 ほぼ終わり
ミヤマアキノキリンソウ 赤岩尾根〜稜線 花盛り〜終わり
オヤマリンドウ 赤岩尾根上部〜稜線 花盛り
ヤマハハコ 赤岩尾根上部〜稜線 終わりが多いが一部で花盛り
ミヤマママコナ 赤岩尾根上部 終わりに近い
カライトソウ 赤岩尾根 終わりに近い
ツルリンドウ 冷乗越付近 終わりに近い
オトギリソウ 稜線 終わりに近い
ミヤマダイコンソウ 鹿島槍ヶ岳北峰直下 1株だけ咲いていた
ネバリノギラン 赤岩尾根上部〜稜線 終わっている? 花がほとんど開かないので咲いているのかよく分からない
ウサギギク 吊尾根鞍部 終わりに近い
ウメバチソウ 吊尾根 花盛り
シコタンハコベ 吊尾根 花盛り
ミヤマウイキョウ 吊尾根 ほぼ終わり
イブキジャコウソウ 吊尾根 1輪だけ咲いていた
チシマギキョウ 吊尾根 ほぼ終わり
バイカオウレン 稜線 数輪が咲いていた
ミヤマコウゾリナ 稜線 ほぼ終わり
ミヤマキンバイ 稜線 毎年遅くに咲く株に数輪が咲いていた
イワツメクサ 稜線 まだたくさん咲いているがピークは越えている
トウヤクリンドウ 稜線 ピークを過ぎている
ハクサンイチゲ 稜線 一部の株で咲いている
ハクサンフウロ 稜線 終わりに近い
ホソバミミナグサ? 稜線 ほぼ終わり。1株だけ咲いていた
イブキトラノオ 稜線 ほぼ終わり
タカネツメクサ 稜線 ほぼ終わり
タカネヨモギ 稜線 まだ咲いている? 元々開花しているのか判別できないような花
この他にセリ科、ユキノシタ科、タデ科の花が咲いていたが、私の知識では種類が判別不能でここに記載していない


大谷原左岸駐車場 発電用取水堰
西俣出合の堰堤トンネル 高千穂平(標識ピーク)
安曇野、松本市街地の夜景 冷乗越(県境稜線)
冷池山荘。まだ消灯状態だった テント場。10張程度あった
布引山山頂 最後の登り
午前5時15分に雲から日の出 鹿島槍ヶ岳南峰山頂
鹿島槍ヶ岳南峰から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
岩壁帯を下る ミネウスユキソウ
南峰を振り返る トウヤクリンドウ
最低鞍部南側の残雪は残り僅か ミヤマアキノキリンソウ
キレット方面 北峰に向かう
イワツメクサ 季節外れのミヤマダイコンソウ
鹿島槍ヶ岳北峰山頂 鹿島槍ヶ岳北峰から見た鹿島槍ヶ岳南峰
鹿島槍ヶ岳北峰から見た360度パノラマ展望(クリックで拡大)
黒部側からガスが上がってブロッケン現象が出た 吊尾根鞍部のウサギギク
ミヤマコウゾリナ ヤマハハコ
ミヤマホツツジ ウメバチソウ
ホソバミミナグサっぽい チシマギキョウ
1つだけ咲き残ったイブキジャコウソウ ミヤマウイキョウ
シコタンハコベ。たくさん咲いていたのには驚いた 南峰てっぺんに人の姿が見える
鹿島槍ヶ岳南峰に再び立つ 鹿島槍ヶ岳南峰から見た南の展望
鹿島槍ヶ岳南峰から見た槍穂 南峰でもブロッケン現象が見られた
下山開始 タカネツメクサ
ミヤマコゴメグサ 振り返る
季節外れのハクサンイチゲ。ここでは毎年見られる ミヤマトリカブト
ネバリノギラン タカネヨモギ
ミヤマオトコヨモギ ウラシマツツジは紅葉し始め
ハクサンフウロ。9月でも咲き残っている コケモモの実
季節外れのバイカオウレン シラタマノキの実
オヤマリンドウ ベニバナイチゴの実
イブキトラノオ ヒトツバヨモギ
オトギリソウ 季節外れのミヤマキンバイ
帰りのテント場は空っぽ 午前8時の冷池山荘前はまだ閑散としていた
信州側は雲が湧いていた 冷乗越
カライトソウ 上部のガレ場
下部のガレ場 シラタマノキの実
ミヤマママコナ 白樺平
ホツツジ 高千穂平を見下ろす
刈られた笹 ノリウツギ
高千穂平(標識ピーク) オオカニコウモリ
ヨツバヒヨドリ リョウブ
ハクサンオミナエシ 西俣出合の堰堤
キオン テンニンソウ
ネジバナ。小さな花の列がらせん状に付いている 林道終点から北股本谷に下る
昨年9月に設置された水位計 水浴び場所
林道終点のコゴメグサ たぶんミヤマアカバナ
林道終点から山頂方向を見ているが雲で隠れている キバナノヤマオダマキ
ソバナ キツネノボタン
大水で荒れた林道路面 たぶんミヤマアカバナ
キツリフネ。ツリフネソウが黄色くなった種 ツリフネソウ
東尾根冬道入口 キンミズヒキ
堰堤 発電用取水堰
ゲンノショウコ。大谷原付近で多く見られた ゲートは閉じたままで工事はやっていないようだ
大谷原左岸駐車場。相変わらず車が少ない


 お盆前から太平洋高気圧の張り出しが半端で、高気圧の縁を回って南から湿った風が吹き込んでいるため大気の状態が不安定でお昼過ぎは連日雷雨が来ているが、今週末もまた同じ状況。夜中まで雷雨が残って明け方くらいに回復して、お昼頃からまた雷雨の予報である。雷雨は局地的なので登る山で雨が降るかどうかは半々くらいの確率だが、もし森林限界以上で雷に襲われては命に係わる。天気が悪化する前に安全地帯まで下山するのがいい。

 今回の行先は時間がかかる鹿島槍ヶ岳とした。約1か月ぶりで花の種類は秋に移行しているだろう。山頂到着は日の出の時刻とし、雷雨が来る前に下山予定である。天気図を見る限りでは風は弱そうだが、気圧配置が良くなく湿った南西の風が入るので稜線はガスられる可能性があるが、体力維持が主目的なので雨さえ降られなければいい。逆にガスって日差しが無い方が暑さ除けにはちょうどいい。予報では標高3000mの最低気温が+13℃もあるので、8月終わりとしてからかなりの高温だ。通常、この時期ならば下手をすれば初霜が降りても不思議ではないが、温暖化が進んだ近年ではもう考えられない。

 金曜夜の大谷原駐車場は既に数台の車が止まっていた。今週はずっと同じような天気が続いていて、大崩れはしないが山の上でも毎日のようにお昼過ぎから夜半は霧か雨だっただろう(どうやら冷池山荘付近では雨は降らなかったらしい)。午前中に小屋に入るように行動すれば雨に降られることはなかったかもしれないので、それなりに入山者がいても不思議ではない。いつものように橋を渡った先の左岸側駐車場に車は無く、端に止めて酒を飲んで寝たが、この日は気温が高く車載用の扇風機をつけっぱなしにしても暑かった。夜中でこれでは明日の下山時は曇っていなければ灼熱地獄かな。

 翌朝というか夜中午前0時に起床。0時半出発予定で急いで軽く飯を食っていると0時15分にライトを点灯した登山者が上がっていった。私より早い人がいるとは驚きで、当然ながら鹿島槍ヶ岳日帰りだろう。15分の時間差=標高差100mを追いつくことになるだろうか。通常の登山者なら途中で休憩するので、山頂まで無休憩で歩く私が追いつくのは当然だが、こんな早い時刻に出発するのは通常の登山者とは言えない可能性が高い。

 ゲートを越えて林道歩き開始。予報よりも天気が良くて頭上は満天の星空だ。今夜は月が明るいので星はあまり良く見えない。傾斜が緩い間はまださほど暑さは感じないが、扇を出して扇ぎながら歩く。水力発電所用取水堰は今回も照明が煌々と輝いていて、今年の夜間はずっと照明を点灯したままらしい。ここのLEDライトの照明はとんでもなく明るくて眩しいほどだ。

 林道の路面は先月と同様に大雨の影響が残ったままで、路面上を水が流れて溝が掘れたままになっていたり、まだ道路上を沢水が流れていた。それでも新しいタイヤ痕が見られるので、この路面状態でも車が入っているようだ。無理をすれば普通車でも走行できなくはないが、普通車では入りたくない路面状況だ。

 林道終点で北股本谷に下って給水。今回はコースが長いのでいつもの約2倍の500ccとした。これでも不足したら冷池山荘で水を購入すればいい。季節が進んで上流の雪渓が減った分だけ沢の水量も減っていた。堰堤内トンネルだけは気温が低くて天国のような涼しさだが、外に出るとまた暑くなる。西俣出会付近の登山道は最近刈り払ったようで、登山道にはまだ青い草が横たわっていた。今年は少なくとも2回の刈り払いが実施されたはずだ。

 気温も湿度も高いので赤岩尾根の登りは夜中にもかかわらず汗をかかされて首に巻いた濡れタオルが大活躍する。日中になって気温が上がり、日差しが出ると地獄の暑さだろう。赤岩尾根は東向きなので朝から日が当たり、気温の上がり方が早いのが難点だ。この点、柏原新道は大部分が西斜面に付けられているので、朝は日陰になって涼しく歩ける。ただし往復とも爺ヶ岳を越えるので無駄なアップダウンがきついし距離も長くなって所要時間も長くなるのが大きな欠点である。扇ぐ風が涼しくなったのは標高1900mを越えてからであった。

 標高2045mの高千穂平の標識があるピークでようやく傾斜が緩む。この先は笹のはみ出しがあり早朝は朝露に濡れて衣類が濡れてしまうが、ここでも最近刈り払いが行われていて体に触れる笹はかなり少なくなっていた。徐々に樹林が開けるようになって下界が見通せる場所では雲海が出ているのが分かった。長野市、千曲市方面の明かりは見えず、安曇野、松本方面の市街地の明かりだけが見えていた。

 ここまで先行者の光は全く見えなかったが、ようやく視界にとらえた。その差は出発時と同じく15分程度はありそうで、先行者も私と同じく休み無しで歩き続けているのか、休みを入れているとすると私よりもずっと速いペースで歩いてきたことになる。おそらく山頂まで追いつくことはなさそうだ。鹿島槍の稜線は雲はかかっておらず黒いシルエットで見えていて、既に登山者の光も見えていた。この時間に出発しているのはキレット方面への縦走者だろう。爺ヶ岳北峰には雲がかかっていて、これが鹿島槍方面へ延びてこないか気がかりだ。雲がかかっているのは稜線だけで、頭上の星空は相変わらずである。

 赤岩尾根上部に達すると森林限界ぎりぎりになるが、北寄りの風がやや出てきて涼しくなった。気圧配置的には南西の風のはずでちょっと不思議だが、涼しくなるのはいいことだ。白樺平を通過するが前方には先行者の光が見えない。もしかしらもう冷乗越に達したのだろうか。

 2個所のガレを横断して県境稜線の冷乗越に到着。1人の男性が小休止中だったが、この人が先行していた人なのか、それとも種池山荘方面からやってきたのかは不明である。稜線に出ると風がさらに強まって体感温度を下げるが、鞍部へと下ってしばらくは登山道は稜線東側で北寄りの風がブロックされるので防寒装備の追加はせずにそのまま下っていく。ここから見ると種池山荘と爺ヶ岳南峰付近の登山者の光が見えた。劔岳方面では剣沢小屋付近から時折強い光が見えている。小窓付近からは1度だけ光が見えた。劔岳のさらに遠方では雷が鳴っていて、雲が時々明るく光った。かなり距離は離れていて、おそらく日本海上空付近だろう。予報では日本海側ほど天気が悪かったがその通りだった。

 縦走路に入って鞍部へ下り、僅かに登り返して冷池山荘に到着すると、まだ午前4時前で消灯時間らしく窓の明かりは一切無かった。ただし建物の中ではヘッドライトを点灯して動き出している人の姿があった。テント場は10張程度があり、こちらでもテント撤収作業中の姿が見られた。

 稜線東側の縦走路からは布引山へ登っている登山者の光が見えているが、近場には光は見えない。登山道が稜線西側に移って再び森林限界を越えると北西の風が当たるようになり、防寒装備に軍手、毛糸の帽子、腕カバーを着用した。低いハイマツ帯で見られる花はイワツメクサ、トウヤクリンドウ、ミヤマアキノキリンソウくらいで、秋を感じさせる種類に切り替わっていた。イワツメクサは真夏でも咲いているが、秋になってもしつこく咲き残る数少ない種類だ。

 布引山山頂に到着する頃には周囲が明るくなり始め、ギリギリライト不要な明るさになった。東の空は背の高い雲海に覆われて志賀高原の山々どころが北信や頚城山脈の山々も一切見えなかった。雲が高いので日が出る時刻は遅れそうだ。

 ここでふとGPSを見ると電池切れ警告が出ているではないか! どうも前回下山後に充電するのを忘れたらしい。このGPSはこの表示が出ても1,2時間は動くことが多いが、さすがに今回は下山までは持たないだろう。適当なところで予備電池に入れ替えるか。このGPSは単4型電池を2本使用するが、予備電池は1本しか持っていない。でも単4電池はラジオ、LEDライト、音楽プレーヤにも使っているので、それらと入れ替えればいい。特にラジオは電池が弱っていても動くし使用時間が短いので、ほとんどが予備電池として使われるパターンが多い。

 鹿島槍ヶ岳南峰へと登っている途中で日の出を迎える。今日は雲海が高く奥秩父、八ヶ岳、富士山、南アルプスも雲で見えなかった。今回見えた山で一番遠いのはおそらく鉢盛山だったと思う。

 布引山から鹿島槍南峰にかけての西斜面は7月にはお花畑になるが、今はトウヤクリンドウとミヤマコゴメグサだけになっていた。いや、正確には少数ながらハクサンイチゲが咲いていた。一般的にハクサンイチゲは6月下旬から7月上旬くらいの梅雨の期間中に咲く花で、梅雨明け頃には咲き終わっている花である。当然ながら8月下旬に咲いていることはまず無いのだが、この場所だけは毎年秋になって花が咲く株が複数ある。既に花が終わった株の葉が紅葉しているのに花を咲かせる株があるほど遅い時期に花を咲かせることもある。おそらく遺伝的な要因だと思うが、この株が絶滅しないことを願う。トウヤクリンドウとハクサンイチゲが並んで咲いているさまは奇妙としか言いようがないが、それに気付く登山者はほとんどいないだろう。

 風による体感温度の低下が思ったよりも大きいのでゴアの上着を羽織る。最後のきつい登りで鹿島槍ヶ岳南峰に到着。先客は1,2名かと思ったら5,6人もいてびっくり。登山道から見えていた光よりも人数が多かった。いずれの人も私と同じ程度の軽装であり、冷池山荘からピストンに違いない。東側の雲海は五竜岳や白馬岳方面の稜線にもかかっていて、珍しく黒部川に沿っても雲海が出ていて冷乗越から信州側へと滝雲となって流れ出していた。立山はすっきり見えているが、劔岳には雲がかかり始めていていた。いつものパターンなら日本海側の方が雲が少ないのだが、今日は日本海側で天気が悪い傾向なのでそれに当てはまらないようだ。

 北峰に向かう姿は無く、私だけが北峰に向かった。ここまで出発から約5時間が経過して計画通りのペースで歩いてきた。それなりに疲れているが、北峰を往復できないほどではないので足を延ばすことにする。

 急な岩場を急降下しながら花をチェックするが、さすがに夏の花はもうほぼ無い。意外だったのはシコタンハコベが満開状態だったこと。夏の花だとばかり思っていたが、こんな遅い時期に咲いているとは思わなかった。ただし、花だけを見たのではイワツメクサと見分けが付かないので注意が必要だ。葉の形状が見分けるポイントだ。ウメバチソウは夏の終わりから初秋の花だが、こちらはほぼおしまいだった。奇跡的に1株だけミヤマダイコンソウの花が残っていたが、これは例外中の例外だろう。

 最低鞍部の南側にはまだ雪が残っていて、例年だとここは夏の花が一番遅くまで咲いている場所であるが、もうそれらの花は終わっていてウサギギクとミヤマアキノキリンソウが咲いているだけだった。

 キレット方面への縦走路と別れて鹿島槍北峰に向かう。ジグザグに登って山頂到着。前回は倒れていた標識が仮復旧で根元に石を積み重ねて立っていたが、まだ古い形式のままであった。南峰は新しくなっているが北峰の更新はまだ先らしい。山頂から東の足元のカクネ里雪渓(氷河)を見下ろすと、まだ雪が残っているので氷河が消滅してしまったのか不明である。

 小さなナップザックを下すとGPSの電源が既に落ちていた。残念ながらあれから1時間も持たなかったらしい。1本の予備電池とラジオの電池に入れ替えた。試しに電池切れした電池をラジオに入れてみたら起動しなかったので、本当に電池が空っぽになっていたようだ。もう明るくなってLEDライトは不要になったので、こちらの電池をラジオに入れておいたが、ラジオを使うことはなかった。

 北峰山頂で小休止していると、黒部川沿いの雲が風に乗って山頂へと流されてきた。まだ東の空の低い位置にある太陽の方向は晴れているので、山頂と自分の影が霧に写って明瞭なブロッケン現象が見られた。でも写真にすると目で見たよりも虹の色がはっきりしないのが残念だ。

 小休止を終えて南峰に登り返す。その途中で小屋泊まり装備と思われる大きさのザックの男性とすれ違う。キレット方面に縦走に違いないだろう。岩壁帯を通過して尾根の急登では軽装の2人組とすれ違う。こちらは北峰往復だろう。

 登り切って鹿島槍南峰に到着。2,3人の登山者が休憩中だったが、その後は冷池山荘方面から登ってくる登山者がポツポツと到着。通常の週末よりは少なめだが天気が不安定な影響が出ているのだろう。そういえば今回はツアーのような大パーティーは見られなかった。黒部側のガスはさらに高くなって南峰山頂まで達することも。剱岳は既に雲がかかって見えなくなっていた。この分なら下山時は日が隠れて涼しくなるかな。でも大町側の平地に近い部分は雲海がかかっておらず晴れていたので、登山口に近くなるほど日差しが出ている確率は高いかな。

 午前7時に下山開始。すれ違う登山者はいるが、やはり通常の週末と比較して少ないように感じた。遅くまで雪が残る稜線東側ではミヤマトリカブトやハクサンフウロ、ミヤマオトコヨモギ、タカネヨモギなどが見られた。一時的に森林限界を切る手前のハイマツの影にはコケモモの実が多数生っていたが、まだ完熟していなかった。樹林帯に入ってすぐでは季節外れのバイカオウレンの花が複数咲いていた。こんな時期に見たのは初めてだ。登山道が稜線東側に移ると毎年秋に花を付けているミヤマキンバイがあるはずなので探しながら歩いたら無事発見。ミヤマキンバイは6〜7月に咲く花でこんな時期に咲かないはずだが、葉を見る限りは間違いなくミヤマキンバイ。鹿島槍ヶ岳ではハクサンイチゲもこの時期に見られるので珍しい場所だ。

 午前8時にテント場に到着したがテントはゼロ。まあ、こんな時刻だと今日入山した人はまだ到着していないだろうけど。冷池山荘前もまだ人の姿は無し。小屋の前から信州側を見たが雲で真っ白だった。

 鞍部から冷乗越へと登り返していると、こちらへ下ってくる登山者の姿がこれまでよりも増えた感じがする。おそらく日帰りで今日入山した人だろう。冷乗越では爺ヶ岳方面からやってきた5,6人のパーティーが到着したときで賑やかだった。私はここで縦走路を離れて赤岩尾根へ向かう。

 赤岩尾根上部では雲海の雲で日差しが無く涼しかったが、県境稜線から少し離れると太陽の方向の雲が無くなって日差しが照り付けて暑い! しかも北寄りの風が稜線でブロックされてほぼ無風のため余計に暑い。しかも高度が落ちると気温が上がってくるのでさらに暑い! 登りでも汗をかかされたが今回の下りは今年の夏で一番大汗をかかされた。首にかけた濡れタオルで頻繁に顔や腕の汗を拭うが、すぐに汗が噴き出してくる。気温が上がると扇で扇いでも生ぬるい風が来るだけで、放熱効果は大きく低下する。こんな暑い中でも数人の登りの人とすれ違ったが、この暑さを登ったのでは体力的に厳しいだろう。ここ数年は疲労で動けなくなって救助を要請するパターンが急増しているが、おそらくは体力不足が原因ではなく暑さが主な要因ではなかろうか。私のように涼しい夜中に登るのが一番の対策だが、これは万人に通用する手法ではないのが残念だ。特に初めてのルートを暗い時間帯に歩くのは難しいだろう。

 赤岩尾根上部ではまだミヤマママコナが咲いていたが勢いが感じられず、萎れかけたものが多かった。そろそろ終わりだろう。ノリウツギの花がまだ残っていたがこれが最終盤だろう。シラタマノキは花が終わって真っ白な実が生っていた。一応、食える見であるがその風味は淡い甘みはあるものの湿布のようで、美味いとはいいがたい。高山で美味いのはクロマメノキ、クロウズコ、コケモモである。

 汗まみれになって赤岩尾根を下りきって林道終点で北股本谷へ下って水浴び。沢の水は冷たくて最高に気持ちよかった!

 林道終点の広場では例年だとコゴメグサが見られるが、今年もたくさんの花を付けていた。こいつは咲いている期間が長く、1ヶ月以上見られるはずだ。ここで今回初めて見た花が登場。その名もネジ花で、花が茎に螺旋状に巻き付いたように配置された非常に個性的な見た目をしている。秋の花とは知らなかった。少し下ると形はミヤマオダマキそっくりで色が青ではなくクリーム色の花を発見。帰宅後に調べたらシロバナノヤマオダマキとのことで、結構な数が咲いていた。林道脇ではこの他にソバナ、オオカニコウモリ、ツリフネソウ、キツリフネ、ミヤマアカバナ、キツネノボタン、キンミズヒキ、ゲンノショウコなどが見られた。

 残りの林道歩きは再び汗をかかないよう日陰を選びつつのんびりと歩く。もうすれ違う登山者はいないし、今は工事をやっていないので車が入ってくることもなく、ゲートは施錠されたままであった。

 大谷原駐車場は私の車がある左岸側は3台、右岸側は10台弱であった。稜線は雲に覆われて下からでは見えなくなっていたが、もしかしたらこれは雲海の雲で上は晴れている可能性が無きにしもあらず。まあ、ガスっている可能性の方が高いけど。大谷原の気温は高くて日陰でも暑い! 車の外気温度計を見たら+28℃で今年の北ア登山口での最高気温だった。通常は下山後は登山口からしばらくは車のエアコンは不要なのだが、今回は最初からエアコン全開だった。長野市内に戻ると猛暑で焼けるような暑さで、自宅に帰って室内の温度計を見たら+35℃を越えていて、エアコンを入れても室内温度が+25℃まで下がるのに数時間を要した。

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